幽雅に咲かせ墨染の桜 東方JukeBox向けアレンジ 再録の話
yohineです。今回は東方JukeBoxへの移植作業のお話をします。
出典
幽雅に咲かせ墨染の桜アレンジの初出は東方スイーツで2008年の春に博麗神社例大祭5で発表した作品です。特設ページは死んでますので同楽曲を収録しているベストのリンク貼っておきます。
これは当時原曲重視でそれなりの手間をかけた作品なので再録をやってみました。東方JukeBox向けの制作も20曲以上やってきたところなので、このハードウェアでできる限界、得意不得意もだいぶわかってきた段階でしたので、この曲はオーケストラパートとシンセパートを一部省略すればそれなりに良い仕上がりに持っていけると予想していましたが、概ね予想通りになったと思っています。
移植作業について
東方JukeBoxは以前から書いていますがRoland SC-55以下とハードウェアの制約(音色数72、同時発音24、最大16ch)が厳しいので当然ながら完全な再現はできませんが、音質面は度外視してニュアンスや雰囲気は再現を目指しています。

原曲はおおむねこのような構成で、今どきの曲と比較したらトラック数は特別多くはありませんが、リズム入れたら40トラック以上でほとんどが別のchに割り当てていますので、東方JukeBox仕様である16chに抑えるには楽器の割り付けは半分以下まで削減しないといけません。
しかし下記の工夫で回避しています。
- 東方JukeBoxはこのようなch不足を最初から想定していたのでドラムはメイン1、ループ1の2chだけでほとんどすべての音色を賄えるようにしてあります。幸い東方JukeBoxはメモリ展開型ではなくFlash逐次アクセス方式のため常時フル音色を使えるのでch数の制約は設計上の工夫で回避をしています
- GM配列のように一つだけのドラムキットで作ってしまうとジャンルによっては複数のドラムキットを切り替えたり複数ch用意する必要が出てきますがこのようにすれば少ないchでも多くの表現をこなすことができます
- 同じ発想でkotoや尺八(今回はch不足で入れていません)も超高音域や低音域に別の奏法を配置してあります。この方法でもch数を削減できます
- 厳しいのはオーケストラ編成です。例えば1chでフルオケのアンサンブルパッチみたいにするとアタックリリースが固定になってしまい違和感ある固い演奏になってしまうし、編成の柔軟性も消えてしまうためそういう方法で音源は作成していません。そのため今回はオーケストラ風のところは楽曲編成もアンサンブルからも大幅にカットしています
- オーケストラの省略は東方JukeBoxのスピーカの貧弱さを活かして細かい部分は聞こえない前提でなんとなく雰囲気だけ出るようにしています。実際は細部を全然再現できていませんが本体スピーカでなんとなく音を聞いているだけならそこまで気にならないはずです
- 雰囲気を出すための環境効果音もスピーカシステムの貧弱さとFlash容量の都合で音源を収録していませんのでこれを使うパートも全カットです。細かいディテールに関係する部分は表現できないことが当初の設計思想からわかっていたので音源は最初から除外しています(このスピーカでは何も聞こえないため)
- 外郭をそれらしく作りあとはドラムとベースを極端に大きくすることで細部を隠します。スピーカももともと低音が全く出ないので相性の良い方法です。ch数削減や細部表現をごまかすには最適なので東方JukeBoxでは積極的にこの方法を使っています
赤の下線はほぼネガティブ要因を指します。こういうところが単純な移植作業ではないので地味に手間がかかるところです。
最終的に東方JukeBox仕様のデータはこのような編成になりました。

比較用の音源
CD収録のオリジナルの音源はこんな感じです
東方JukeBoxだとこんな感じになりました
どうでしょうか。本格的なスピーカで聞くなら2008年版のほうが圧倒的に良い(特に音質や質感)と思いますが、東方JukeBoxよりちょっと良いくらいのスピーカだとそこまで違いが出ないかもしれないです。むしろ15年位経って少しだけですけどリズム打ち込みはうまくなったので、割と東方JukeBoxのほうが良いところもあるかもしれません。